Little AngelPretty devil 〜ルイヒル年の差パラレル

    “あしたはオフ日?”

 


前例がなかった訳じゃあないが、
それでもこうまで遅い秋にやってくるとは
何て出鱈目なという台風の急接近、
明日にもとの予報通り、ボチボチその前兆の大風が吹き始めている
東京の某お屋敷の一角にて。

 “雨になったら屋内トレーニングってところかね。”

通っている大学の講義の方も、
学園祭が近いとやらいう都合へ合わせて下さる…という建前構えて、
早めに切り上げてくださったり、休講にした上で。
実は自身の学会出張の準備をなさっておいでの、
結構調子のいい教授が、この秋はやたらおいでだったおかげさま。
学祭には関係も関心もあんまりないが、
絶賛開催中のアメフト秋季リーグへ向けてのトレーニングには、
存分に時間が取れたのが大助かりだと。
今日も今日とて、学生ならば休日の土曜だってのに、
わざわざとガッコへ出向くと、
頼もしいレギュラー陣営と共にがっつり基礎トレをこなした葉柱主将。
幸いと言っていいものか、今週はゲームのなかった週末なので、
明日もまた大学のグラウンドでの練習か、

 “でもなあ、台風が来てっと施設利用に待ったがかかるかもだな。”

グラウンドのコンディションがどうこうではなく、
落雷だの大風による飛来物だので怪我人が出たらば
一体誰が責任を取らされるのか。

 “…最近話題の“自己責任”振り回すのもナンだしなァ。”

よく、台風が来ている最中だってのに
高波目指してサーフィンをしに出てゆくお人などが、
死んでも本望って覚悟で出てくんだから止めてくれるな、
何か起きても誰にも責任を負わせる気はねぇ…
なんてな言いようをなさる場合があるそうですが。

  だからって、救助に行かないってワケにはいかないでしょうが。

何でそこで大人の分別できないかな。
大きい波に乗りたいなら本場へ行ってくればいい。
そういうよく判らない屁理屈こねて、
結果、たくさんのお人へ迷惑かけまくってどうするか。
ご利益が山ほどありそうだからと、
大火災の中へ火の粉くぐりに飛び込むようなもんだぞ。

 “その例えもどうかと思うが…。”

いやん…などと、随分と的外れな脇道に逸れつつ、
ちょっと早い目ながらもハードな練習にほどよく疲れた身、
ベッドに埋めてうとうととまどろんでいたところ、

  ―― ひたひたひた、がたた、
     がちゃり、ごそごそ……

こっそりとした行動のつもりなら、全くの全然巧を奏していない、
風の音がするだけだった静けさの中に、
がたがたした荒っぽさを響かせてやって来た誰か様。
遠慮の全く挟まらぬ態度でドアを開けての入ってくると、
何の躊躇いもなく真っ直ぐにお部屋を横切り、
ベッドまで辿り着いてのわしわしと
羽毛の上掛けめくり上げ、中へ入ってもどんどん前進。

 「もしかして夜這いか?」
 「違げーよ。」

横っ腹辺りから入って衿元へ。
もそもそと芋虫のような匍匐前進した末に
ひょこりと顔を出してきたのはやはり、いつもの小悪魔坊やであり。

 「こんな油断しまくりだと、いつか寝首かかれっぞ。」
 「安心しな、ここまで誰にも止められねぇで入ってこれる奴ぁ、
  お前くらいのもんだから。」

一応政治家の家だぞ、ここは。蛇井とか見張りに立ってたろうがよ。
あ、そかそか…と、こちら様にての自分への認識というものを再確認したところで。

 「つかなんでこんな早く寝てんだ、ルイ。」

自分のような子供でも元気に活動中だってのによと、
枕元にてチョこリと正座もどき、
お膝をそろえて座って見せる小悪魔様なのへ合わせてのこと、

 「誰か様が張り切ってしごきまくってくれたからだろが。」

こっちゃあクタクタなんだぞとぶうたれながら、
葉柱もまた、起き上がると胡座をかきつつ、枕元のスイッチで明かりを灯せば。

 「……お前こそ、どういうカッコをしてやがるかな、こんな夜更けに。」

黄昏色の明るさの中、
結構背丈も伸びてきたとはいえ、まだまだ子供のそれである頭身が、
今宵は日頃の何割増ですかと思うほど、幼さへ微妙に傾きまくって見えたのは、
決して気の迷いなんかじゃあない筈で。

 「だ・か・ら、これを見せに来たんだのによ♪」

小さな両手で愛らしく縁を掴んだツバ広帽は、
頭が納まってる部分が中折れの尖がった三角で。
金髪の裾をはみ出させている首周りには、
細い肩を覆っている、漆黒のマント側についているのだろ、
先の尖った衿が大人びた印象。
だがだが、その下には
ノースリーブで半ズボンという型の
微妙にせくしぃなジャンプスーツをまとっており。
小さな手とか細い腕のほとんどを覆う手套といい、
小さな膝小僧より丈のあるニーハイタイプのブーツといい、
漆黒で揃えているものだから、色白な肌には毒なほど映える映える。

 「寝とぼけてんのは もしかして俺の方か?」
 「気の迷いじゃねぇから安心しなよ。」

きりりと冴えさせた三白眼で葉柱が言及すれば、
負けないぞという真顔で言い返してきた妖一坊っちゃん。

 「だからさ、明日、アミノバイタルフィールドに着てくんだってば。」
 「ああ? 俺ら、明日は試合なんてねぇだろが。」
 「1部リーグはある。」
 「う…。」

そう、
1部2部3部エリアという4つのリーグ、かけるA・Bブロックと、
さすがにチーム数が多いため、
そうそう毎週毎週全部のチームが試合をこなすという訳にもいかずで、
10月最終週の週末に当たる今日と明日は、
2部リーグの葉柱たちにはゲームがない…が、
1部リーグの皆様は昼から各スタジアムで2ゲームずつが予定されており。
台風の接近で開始時間がおくれるとのアナウンスがあったのも確認済み。
こっちだって参戦中で、まずは自分たちのトレーニングが優先だ。
練習が早くに済めばまあ見に行くかも…と、
そのくらいにしか関心の範疇になかったことだけに、

 「何でそんなに張り切って…まさか。」
 「♪♪」

もしかせずとも、魔女っ子のコスプレなのといい、
明日は十月最後の31日だってことといい、

 「ハロウィンフェアに参加かよ。」
 「大当たり〜〜〜vv」

だってよ、コスプレして行きゃあ、
抽選でコイントス権がもらえっかもしんねぇし。
そいつはまあ確率低いが、ケーブルテレビの中継では必ず抜かれることだろしよ。

 「…紛らわしいから専門用語で言うな。」
 「??? 専門用語?」

寝た子を起こすんじゃありません、総長さん。
いや、この場合はやぶへび、かな?
(笑)
ちなみに。妖一くんが言った“抜かれる”というのは、
ゲームの狭間やダウンごとの切れ目なんぞに、
気分転換をかねてか、観客席の方などへカメラを向けて、
ギャラリーを抜粋して映すことで。
一体何と混同しそうだから“やめろ”なんて言ったのかは、
まま 武士の情で訊かないけれど。

 「何だよ、どーゆー意味だよ、どっか変だったか?」
 「それよりも、だ。」

あ、誤魔化したな。
(苦笑)

 “いーもん。あとでとーちゃんに訊くから。”←あ

なんか、微妙に不穏なことを胸に秘めちゃった坊やを前に、
神妙なお顔になった葉柱が訊いたのが、

 「今更、テレビカメラが珍しいクチでもなかろうよ。」
 「おお。そういうんじゃねぇぞ。」

さすがはルイだ、よく知ってるなァと、満足そうに笑ってから。

 「映ったらせいぜい愛想振ってから、
  来週の俺らの試合も観に来てねってプラカード出すんだvv」
 「ほほぉ。」

こぉんな可愛い子も来てるぞ、逢いに来てねってアピールしたらば、
ロリ系や妹系好きのカメラ小僧が釣れるかも知れねぇし…なぞと。
年に似合わぬ恐ろしいことを言い出す小悪魔様であり。

 「…そんな連中に来られてもなァ。」
 「いんだよ、色んな伝手やコネを集めとくのは情報収集の基本だかんな。」

セナとリクと連れてって、着飾らせての3人も綺麗どころが揃えば、
中身はともあれ“ま・いっか”って気は済むだろし。
女が目当てなクチにはウチの綺麗どころのチアに目が眩むことだろし。

 「やり手ババァか、お前は。」
 「何とでも言えよ。」

  だから明日はルイも一緒に行こうな、
  なんで俺まで。
  車出せ、車。
  で、何で布団へ潜り込む。//////// ←あ
  帰るの面倒だから、トレーニングも調布へも、こっから出る。

ちゃっかりと寝ようとする坊っちゃんだったが。
こらこらその格好で寝るつもりかと、
細い肩やら、しなやかで柔らかい太ももやら、
すぐの間近で剥き出しにされちゃあ…
そりゃあ落ち着けませんわな。
(大笑)
平均年齢が低すぎるのか、なかなかしっとりした風情には落ち着かぬ、
こちら様の晩秋の更夜であったらしいです。




   〜Fine〜  10.10.30.


  *本文中にも挙げましたが、
   アミノバイタル フィールドでは
   月末のゲームに即していろんなイベントを開催しているようで。
   ハロウィンの仮装してきたら云々も
   実際に催されるイベントですので念のためvv
    http://www.kcfa.jp/INFO.htm

   味の素スタジアム アミノバイタル フィールド (調布市)
    http://www.kcfa.jp/GR-K.files/AJISTA.htm
   アクセスは京王線で新宿駅から約20分です。
   京王線飛田給駅下車 徒歩5分

   台風が心配じゃあありますが、
   もしかしたらディズニーランドのチケットとか当たるそうですんで、
   よろしかったならお運びくださいませませvv
 

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